AI従業員 / コラム

Column

休眠客の掘り起こしをAIで無理なく続ける方法

2026-09-22 ・ 合同会社9Z 須賀龍平

この記事の要点

休眠客の掘り起こしとは、一度来た・買ったきり足が遠のいたお客さん本人へ“もう一度”を促す作業のことで、新規獲得より安いはずなのに締め切りがなく日々の対応に押し出されて後回しになり続ける。台帳から前回来店・購入から間が空いた人を抽出する、抽出条件を相談する、案内文を下書きする、送ったあとの反応を一覧化する——この下ごしらえはAIに任せられるが、誰に・いつ・どの文面で送るか、そして送信そのものは人が握り、台帳の全員への自動一斉送信はしない。再来を約束するものではなく、忘れられたお客さんに思い出してもらう入り口をつくる掘り起こしを、紹介や見積もり後の追客とも切り分けながら、自分の一人会社でも事務も営業もAIに任せて回している須賀龍平が、無理なく続ける分担として書いた。

休眠客の掘り起こしとは、既にある台帳をもう一度動かすこと

休眠客の掘り起こしにおけるAI活用とは、「誰に・いつ・どの言葉で声をかけるか」という判断を人に残したまま、台帳から前回の来店・購入から間が空いたお客さんを拾い出し、案内文の下書きを整え、送ったあとの反応を並べる——この下ごしらえだけを仕組みに持たせることです。機械に丸投げして、台帳の全員へ一斉送信することではありません。

新規を一人集めるより、一度来てくれたお客さんにもう一度来てもらうほうが安い。多くの経営者が頭では分かっていても、手が回りません。「一度きりで終わったお客さん」「しばらく顔を見ていない常連」に“もう一度”を促す作業——台帳を開き、誰に声をかけるか選び、文面をつくって送る——が、目の前の対応に押し出されて後回しになるからです。手元の台帳は、眠らせれば記録、動かせば売上を生む資産。掘り起こしは、その資産を動かし直す作業です。

なぜ、掘り起こしは「あとでやろう」のまま消えるのか

掘り起こしが進まないのは、やる気の問題ではなく、この仕事に締め切りがないからです。

今日の予約、目の前のお客さん、届いた問い合わせには相手がいて、待たせれば苦情になる期限があります。ところが「半年前に一度来たきりの人へ、そろそろ一声かける」には締め切りがない。やらなくても今日は誰にも怒られないので、手が空いたらやろうと思ったまま、次の忙しさが来て先送りになる。しかも始めようとすると工程が一気に増えます。期間で区切り、誰に声をかけるか選び、その人ごとに文面を変え、送って、返事を拾う。まとめてやれば半日仕事で、それを空けられる経営者はそういません。だから「いつかまとめて」が来ないうちに、眠っているお客さんは通える別の店を見つけていきます。

紹介や見積もり後の追客とは、何が違うのか

掘り起こしは、似て見える別の作業としばしば混同されますが、動かす相手が違います。

一つは紹介・クチコミ。今いるお客さんを入り口にして、その先の“新しい人”に届く話です。掘り起こしは逆で、既に一度うちを知っているお客さん“本人”に、もう一度来てもらう話。既存客から新しい客を得るやり方は口コミ・紹介中心の商売にAI従業員は必要かにまとめました。この記事は、離れかけたお客さん本人へ声をかける角度で見ています。

もう一つは見積もり後の追客。まだ買っていない、決めかねている相手を後押しする話です。掘り起こしが相手にするのは、一度は買った・来たけれど足が遠のいた人。すでに一度は財布を開いた相手なので、声のかけ方も「はじめまして」ではなく「ご無沙汰しています」から始まります。まだ買っていない相手への追客は見積もり後の追客が回らず失注するのを防ぐにまとめました。今回は「一度は縁のあった人の再訪」を扱います。

どこまでAIに渡し、どこから人が決めるか

掘り起こしでAIに渡すのは、台帳を見て選ぶ材料をそろえ、文面を下書きし、反応を並べる、という手を動かす部分だけです。

任せられるのは、台帳から「前回から一定期間が空いたお客さん」を抽出すること、その条件をどう切るかの相談に乗ること、案内文を下書きすること、送ったあとに「返事があった・予約が入った・反応がなかった」を一覧に並べることまで。一方、誰に声をかけるか、いつ送るか、どの文面で出すかは、必ず人が決めます。相手の顔とこれまでの付き合いを知っているのは経営者本人だからです。そして——ここが一番大事ですが——台帳の全員へ一斉に自動送信する使い方はしません。案内は受け取る側の手間でもあり、誰彼かまわず送れば、せっかくの関係を安売りに変えてしまう。仕組みの全体像はAI従業員のサービス紹介で確認できます。

なお、この掘り起こしは「もう一度来てもらいやすくする」きっかけづくりで、再来を約束するものではありません。声をかけても必ず戻るわけではない。ただ、放っておくより、思い出してもらう一通があるほうが、戻る入り口はつくれます。

AI従業員に任せられる業務の例

誰に・いつ・どの文面で送るか、そして送信そのものは、必ず人が行います。一度縁のあったお客さんとの関係なので、間合いの判断は経営者に残す設計が前提です。

導入の流れ

最初にやるのは、掘り起こしの全部を仕組みにすることではなく、まず一つの業務だけを選ぶことです。多くは「間の空いたお客さんの洗い出し」から始めるのが軽い。離れかけている相手を並べるところまでをAIに任せ、誰に声をかけるかはご自身の目で選ぶ——この一歩なら、今日の仕事を止めずに始められます。

今お使いの台帳や連絡手段は変えません。エクセルの顧客名簿でも、予約システムでも、LINEの友だちリストでも、今ある形のまま裏側にAIを組み込みます。電話番号やメールアドレスといった連絡先を扱うので、どの情報をどこまでAIに渡し、どこからは人だけが見るかを、最初に線を引いておきます。案内はLINE・メール・DM・はがきといった、相手が自分のペースで読める手段が中心で、こちらから電話をかけて回るやり方は取りません。

最初の2〜14日は、小さく試しながら御社の言葉に寄せていく期間です。抽出してみると埋まらない欄(前回来店日が記録されていない等)が見えたり、下書きの言い回しが硬く感じたりします。そこを見て、区切る期間や案内文のトーンを御社らしく直す。使い始めてからの手直しまで含めて、最初のひと区切りと考えてください。

よくある質問

台帳の全員に、AIが勝手に一斉送信してしまうのですか?

しません。AIがやるのは、間の空いたお客さんを洗い出して並べ、案内文を下書きするところまで。誰に送るか、そもそも送るかは人が選びます。一度縁のあった相手だからこそ、一斉配信ではなく、顔を思い浮かべて一人ずつ選ぶ前提で組みます。

掘り起こしの案内を送りすぎて、迷惑がられませんか?

そこは仕組みで抑えます。短い間に同じ人へ何度も案内が行かないよう履歴を控え、「もう案内はいらない」という申し出があれば記録して、次からは外します。案内は相手の手間でもあるので、頻度を抑え、断りやすくしておくことを設計に含めます。

電話で一軒ずつ掘り起こすのを、AIに任せられますか?

こちらから電話をかけて回る掘り起こしは行いません。AIが直接受けるのはLINE・メール・フォームまでで、受話器の向こうでAIが喋る仕組みは入れません。かかってきた電話は人が取り、出られなければ留守番電話の伝言をAIが文字に起こして要点を並べます。声かけ自体は、相手が自分の時間で読めるメッセージやはがきが中心です。

お客さんの連絡先や来店履歴を、AIに全部見せることになりますか?

渡す範囲は人が決められます。抽出に必要な「前回いつ来たか」までは渡し、その人にどう応えるかの判断材料——込み入った事情ややり取りの機微——は人だけが見る、と線を引けます。誰に声をかけ、どこまで踏み込むかという判断は、経営者本人に残す前提です。

声をかければ、離れたお客さんは戻ってきますか?

必ず戻るとは言えません。掘り起こしは「戻ってきてもらいやすくする」きっかけづくりで、来店を約束するものではありません。ただ、放っておかれるより、思い出してもらう一通があるほうが、もう一度足を運ぶ入り口はつくれます。

まとめ

休眠客の掘り起こしが進まないのは、新規を追うより安いと分かっていても、締め切りのないこの仕事が毎日の対応に押し出されるからです。台帳の洗い出しと案内文の下書きを仕組みに渡し、誰に・いつ・どう声をかけるかは人が握る——この分担なら、人を増やさずに掘り起こしを続けやすくなります。

足立区保木間で合同会社9Zを回しているのは僕一人で、掘り起こしのような「やらなくても今日は困らない仕事」を後回しにしてきた感覚は、身に覚えがあります。かつて会社を大きくしようと業務委託で人を増やしたとき、増えたのは売上より、誰が誰にどう連絡したかを見比べる書類とやり取りでした。人が増えるほど手間がかさみ、利益が先に痩せていく。今は委託を一社に絞り、人がやるべき判断以外をAI従業員に任せています。売上の額は変えないまま、利益率には余裕が戻り、肩の力が抜けました。だから、手元の台帳という一番近い資産を眠らせている中小企業に、この仕組みを届けたいと思っています。

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須賀龍平(合同会社9Z 代表)
この記事を書いた人 須賀 龍平 — 合同会社9Z 代表

1996年生まれ。一人で会社を経営。業務委託で組織を広げた結果、利益とゆとりを失った経験から、「人がやらなくていい仕事はAIに任せる」やり方に切り替え、自社で実践したうえで「AI従業員」を事業化。在宅ナレーター育成スクールほか複数の事業を一人で運営している。

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