AI従業員コラム

Column

少人数の会社にAIは大げさなのか

2026-07-19 ・ 合同会社9Z 須賀龍平

この記事の要点

「AIは規模の大きい会社のもので、社員が数人のうちはまだ早い」という感覚は、実は順序が逆になっている。人が多い会社は事務を専任者に振り分けられるが、社員が2〜5人・家族やパートで回している会社ほど、一人が現場も営業も事務も掛け持ちし、一人あたりが事務に取られる比率はむしろ高い。だから小さな会社こそ、判断の要らない一次受けや連絡・整理をAIに逃がす効果が出やすい。一人社長や個人事業主が全部を一人で抱える話とも、専任の事務員が何人もいる会社の話とも違う「数人で回す会社」に固有の詰まり方がある。大げさな入れ替えではなく、いちばん手を取られている1業務を小さく仕組みに渡すところから始めるのが現実的である。足立区で合同会社9Zを一人で営む須賀龍平が、人を増やして利益が細った自身の経験を踏まえて解説する。

少人数の会社にAIは大げさなのか

大げさではありません。むしろ人が少ない会社ほど、一人あたりが事務に取られる比率が高く、判断の要らない一次受けや連絡をAIに逃がす効果は出やすくなります。

「AIは規模の大きい会社が入れるもので、うちみたいに数人の会社にはまだ早い」という感覚は、順序が逆になっています。人手のある会社は事務を専任の担当者に振り分けられますが、社員が2〜5人、あるいは社長と家族・パートで回している会社では、一人が現場も営業も事務も掛け持ちします。手が足りないからこそ、後回しにできない受付や連絡が、いちばん動ける人の時間を削っていきます。

なぜ「小さいうちは早い」という感覚が生まれるのか

AIという言葉に、大きなシステムを導入して業務をまるごと入れ替える、という重たいイメージがくっついているからです。

多くの人が思い浮かべるのは、専任のIT担当を置き、全社員が新しいツールの操作を覚え、既存のやり方を一斉に切り替える、という光景です。それは確かに人数の多い会社の話で、数人で回している会社からすれば「うちには大げさ」に映ります。けれど、ここで問題にしているのは業務の入れ替えではなく、今いちばん手を取られている一つの受付や連絡を、今使っているLINEやメールの裏側で肩代わりさせる、という小さな話です。全部を変える必要はなく、覚え直す操作もありません。大げさに見えていたのは、AIそのものではなく「大きく入れ替える」という思い込みのほうです。

一人社長や個人事業主とは、何が違うのか

一人で全部を抱える立場とも、事務員が何人もいる会社とも違い、「数人で回す会社」には固有の詰まり方があります。

社長一人だけ、あるいは個人事業主として全部を一人でやっている場合は、事務が回らないという課題がはっきり本人に集中します。その話は一人社長が事務に潰されないための仕組み個人事業主がAIで事務を軽くする最初の一歩で扱っています。一方、社員が数人いる会社では、事務が「誰か手の空いた人」に流れ、その時々で担当が変わります。専任ではないので、現場が忙しくなれば受付や連絡がまるごと後回しになり、誰の仕事とも決まっていない事務が宙に浮きます。人が少し増えたぶん「誰かがやるだろう」という隙間ができ、その隙間に取りこぼしが溜まる——これは一人のときにも、事務員が何人もいる会社にもない、数人の会社に特有の穴です。

少人数の会社ほどAIが効きやすい理由

一人あたりが事務に取られる比率が高く、しかも取りこぼしの一件が経営に響きやすいからです。

社員が数人の会社では、問い合わせに返す・見積もりの前の聞き取りをする・日程を調整するといった作業を、売上を作る本業の合間にこなしています。人数が少ないぶん、事務に取られる時間の割合は大きく、一人が半日それに費やせば会社全体の動きが半日鈍ります。加えて、受注の母数が大きくない会社ほど、返信が遅れて逃した一件の重みは相対的に大きくなります。だからこそ、判断の要らない一次受けや連絡・整理を仕組みに渡し、人は判断と本業に集中する——という分担の効果が、少人数の会社でこそ出やすいのです。人を一人増やして事務に充てるより、いちばん手を取られている作業だけを先に外に出すほうが、固定費を増やさずに動きが軽くなります。

何から始めればいいのか

会社の中でいちばん多く手を止められている、判断の要らない一つの作業から始めるのが現実的です。

たとえば、日中に鳴っても出られない問い合わせの一次受け、見積もりの前に毎回聞いている同じ項目のヒアリング、予約や日程の調整といった作業です。これらは中身の判断ではなく、決まった手順の繰り返しなので、AIに渡しやすい部分です。逆に、金額を決める・可否を判断する・お客様と踏み込んだやり取りをするといった部分は人に残します。小さく1業務から始める考え方は、中小企業のAI導入で失敗しないための最初の一歩にもまとめています。全体像はAI従業員のサービス紹介で確認できます。

よくある質問

社員が2〜3人しかいなくても意味がありますか?

あります。人数が少ないほど一人が事務に取られる割合は高く、その一人の手が空けば会社全体の動きが軽くなります。むしろ専任の事務員を置けない規模ほど、判断の要らない一次受けを仕組みに逃がす意味が大きくなります。

大きなシステムを入れて、全員が操作を覚える必要がありますか?

その必要はありません。今使っているLINEやメール・フォームの裏側にAIを組み込む形なので、社員が新しい画面の操作を覚え直すことはありません。電話は今まで通り人か留守番電話が受け、そこに残った伝言をAIが整理する形になります。大きく入れ替えるのではなく、いちばん手を取られている一つの作業から小さく始められます。

家族やパートで回している会社でも使えますか?

使えます。誰か手の空いた人が事務をこなしている会社では、忙しくなると受付や連絡がまるごと後回しになりがちです。その「誰の仕事とも決まっていない事務」の一次受けをAIに持たせると、宙に浮いた作業が溜まりにくくなります。

人を一人雇うのと、どちらがいいですか?

業務によります。判断や対人が中心の仕事は人が向きますが、決まった手順の繰り返しである一次受けや連絡・整理は、人を増やして固定費にするより仕組みに任せるほうが身軽です。まずはどの作業がどちらに向くかを、無料診断で一緒に切り分けます。

始めてみて合わなければ、元に戻せますか?

戻せます。小さく1業務から始める形なので、いつでも人の対応に戻せます。大げさに全部を入れ替えないぶん、試して確かめてから広げるという進め方ができます。

電話にもAIが対応しますか?

いいえ。AIが自動で受けるのはLINE・メール・フォームです。電話は今まで通り人か留守番電話が受け、そこに残った伝言をAIが整理します。人が少なく日中に電話へ出られない会社ほど、文字の窓口で受け止め直す形が向いています。

まとめ

「少人数の会社にAIは大げさで、まだ早い」という感覚は、AIを大きな業務の入れ替えだと思い込むところから来ています。実際に効くのは、今いちばん手を取られている一つの受付や連絡を、今使っている道具の裏側で肩代わりさせるという小さな話で、人が少ない会社ほどその効果は出やすいものです。

僕は足立区で合同会社9Zを一人で経営しています。かつて会社を大きくしようと、業務委託で人を増やして組織として広げた時期がありました。ところが人が増えるほど、伝えること・確認すること・書類のやり取りが膨らみ、想像以上に事業の伸びが鈍り、利益も薄くなっていきました。人数が増えれば事務が楽になると思っていたのに、増えたのは事務のほうだった、というのが正直な実感です。今は業務委託を1社に絞り、人が判断すべきところ以外をAIに任せる形に切り替え、売上を変えずに利益率を立て直せました。人を増やして規模で解決しようとするより、いちばん手を取られている作業を先に仕組みへ逃がすほうが、小さな会社には合っている——これは自分の失敗から得た考え方です。

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須賀龍平(合同会社9Z 代表)
この記事を書いた人 須賀 龍平 — 合同会社9Z 代表

1996年生まれ。一人で会社を経営。業務委託で組織を広げた結果、利益とゆとりを失った経験から、「人がやらなくていい仕事はAIに任せる」やり方に切り替え、自社で実践したうえで「AI従業員」を事業化。在宅ナレーター育成スクールほか複数の事業を一人で運営している。

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