AI従業員コラム

Column

中小企業のDXが進まない本当の理由

2026-06-25 ・ 合同会社9Z 須賀龍平

この記事の要点

中小企業のDXが進まないのは、意識や能力の問題ではなく「ツールを導入して、現場が覚えて使いこなす」という前提そのものに無理があるから。多機能なシステムほど入力と運用の手間が増え、忙しい現場では使われずに止まる。AI従業員は新しい操作を覚えてもらうのではなく、今のLINEやメールの裏側で事務の下ごしらえを肩代わりする入れ方で、覚える前提を外す。判断は人が持ち、後回しになりがちな1業務から小さく始めるのがコツ。足立区の一人社長・須賀龍平が、人を増やして利益が圧迫された原体験を交えて解説。

中小企業のDXが進まないのは「覚える前提」に無理があるから

新しいシステムを入れて、最初の一、二週間は現場も使ってくれて、気づいたら元の紙とLINEに戻っていた——中小企業のDXでよく聞く話です。これは意識や能力の問題ではなく、「ツールを導入して、現場が覚えて使いこなす」という入れ方の前提そのものに無理があるからです。忙しい現場ほど、新しい操作を覚える余白がありません。

DXは本来「デジタルで仕事のやり方そのものを変える」ことですが、現場では多くの場合「新しいシステムを入れること」とほぼ同じ意味で語られます。そして導入したものの、入力が増えて使われなくなり、結局もとのやり方に戻る——この繰り返しが、DXが進まないと言われる状態の正体だと考えています。

なぜツールを入れてもDXが進まないのか

ツールを入れても進まないのは、多機能なシステムほど「入力する人」と「使いこなす人」を新たに必要とするからです。

業務管理システムやクラウドツールは、きちんと入力して運用すれば力を発揮します。ところが中小企業では、その入力と運用を回す人手がそもそも足りない。社長や職人が現場で手を止められない中、新しい画面の操作を覚え、毎日データを入れ続けるのは現実的に難しい。結果、最初の数週間は使われても、忙しくなった途端に止まる。これは「記録する場所」を増やしただけで、「働き手」が増えていないからです。この構造は管理システムを入れても事務が減らない理由で詳しく書いています。

つまり、DXが進まないのは決意が足りないからではなく、忙しい会社に「覚えて使いこなす」という重い前提を乗せていることが原因です。ここを外さない限り、ツールをいくつ試しても同じところで止まります。

僕自身も「増やす」方向で一度つまずいた

ここは僕自身の失敗とも重なります。会社を大きくしようとして、業務委託で人を増やして組織として広げたことがありました。けれど人が増えるほど、確認のLINEが増えて、請求書のやり取りが増えて、何かを決めるたびに誰かに話を通さないといけなくなった。気づくと「売上は伸びているのに、なぜか手元に残るお金が減っている」という状態が続いていました。あとで分かったのは、僕がやっていたのは作業を「人」に渡していただけで、仕組みに渡してはいなかった、ということです。コミュニケーションのコストが想像以上に膨らみ、かえって利益が圧迫されました。

そこで考え方を変えました。今は業務委託を1社に絞り、人がやるべき判断以外の作業をAIに任せています。結果として、売上を落とさずに利益率を改善できました。「人を増やす=成長」「ツールを増やす=DX」という足し算の発想ではなく、まず「誰も覚えなくていい形で、作業だけを仕組みに渡す」。この順番が、小さな会社には合っていると感じています。

「覚える前提」を外すと、DXは動き出す

ここで効くのは、新しいツールを覚えてもらうのではなく、今の道具のまま裏側で作業を肩代わりさせる入れ方です。

AI従業員とは、問い合わせの整理・返信や見積もりの下書き・書類の下ごしらえといった事務の「作業」部分を、今お使いのLINEやメールの裏側で肩代わりする仕組みです。現場の人は新しい画面を覚える必要がなく、いつものLINEやメールを使うだけ。判断や最終確認は人が持ったまま、準備の手間だけを渡します。覚える・操作する・入力するという、DXが止まる三つの壁を最初から外すのが狙いです。操作を覚えること自体が苦手でも進められる考え方はITが苦手な経営者でもAIは使えるのかにまとめています。

どこから始めるか——最初に変える1業務の選び方

DXを「全社一斉」で考えると重すぎて止まります。最初に変えるのは、後回しになりがちで、判断より作業が多い1業務に絞るのが現実的です。

この「小さく1業務から」という入り方は中小企業のAI導入で失敗しないための最初の一歩でも書いています。一気に変えようとせず、効果が見えた業務から広げていくほうが、結局は速く進みます。仕組みの全体像はAI従業員のサービス紹介で確認できます。

よくある質問

DXとAIの導入は何が違うのですか?

DXは「デジタルで仕事のやり方を変える」という広い言葉で、AI従業員はその一つの手段です。違いは入れ方にあります。多くのDXが「新しいツールを覚えて使う」前提なのに対し、AI従業員は今の道具の裏側で作業を肩代わりするので、覚える前提を外せます。

うちは社長も含めてITが得意な人間がいないんですが、それでも使えますか?

使えます。むしろ詳しい人がいない会社ほど、「覚えて使いこなす」前提のツールでつまずきます。今のLINEやメールのまま裏側で動かす形なら、新しい操作を覚える必要がありません。

過去にツールを入れて使われなくなりました。また同じになりませんか?

止まった原因が「入力と運用の手間」なら、そこを人に負わせない設計にします。作業はAIが下ごしらえし、人は確認と判断だけ。覚える・入力するという負担を最初から外すのが、前回との違いです。

何から始めればいいか分かりません。

後回しになりがちで作業が多い1業務から始めるのがおすすめです。無料診断で今の業務を一緒に整理すると、「ここなら任せられる」という1業務が見えてきます。

小さな会社や一人社長でもDXは要りますか?

「DX」という言葉に身構える必要はありません。やることは、人を増やさずに作業を仕組みに渡して、判断に時間を使えるようにするだけです。小さい会社ほど効果が体感しやすい構造です。

まとめ

中小企業のDXが進まないのは、意識が低いからでも能力が足りないからでもなく、「忙しい現場に、覚えて使いこなす前提のツールを乗せている」ことが原因です。足し算でツールや人を増やすほど、運用の手間が膨らんで止まる。

僕は足立区で合同会社9Zを一人で経営しています。かつて人を増やして組織を広げようとして、伝える時間や書類が増え、利益が圧迫された経験があります。今は業務委託を1社に絞り、人がやるべき判断以外をAIに任せて、売上を落とさず利益率を改善できました。DXを難しく考える前に、まず後回しになっている1業務を、誰も覚えなくていい形で仕組みに渡す。その小さな一歩から始めるのが、結局は一番速いと考えています。

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須賀龍平(合同会社9Z 代表)
この記事を書いた人 須賀 龍平 — 合同会社9Z 代表

1996年生まれ。一人で会社を経営。業務委託で組織を広げた結果、利益とゆとりを失った経験から、「人がやらなくていい仕事はAIに任せる」やり方に切り替え、自社で実践したうえで「AI従業員」を事業化。在宅ナレーター育成スクールほか複数の事業を一人で運営している。

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