同業他社はもうAIを導入しているのか
正直に言うと、他社が導入しているかどうかは正確には分かりませんし、分かったところで、御社が入れるべきかどうかの判断材料にはなりません。判断の軸に置くべきなのは「周りがやっているか」ではなく、「自社のどの業務に手を取られ、どこで取りこぼしているか」です。
「同業がもう使っているらしい」「うちだけ遅れているのでは」という不安は、多くの経営者が口にします。気持ちは分かります。ただ、この不安を軸に動くと、目的のないまま道具だけを増やしてしまいがちです。この記事では、乗り遅れの焦りをいったん脇に置いて、入れるべきかどうかを自社の中身で判断するための見方を書きます。
なぜ「他社が使っているか」は判断材料にならないのか
他社の導入状況が判断材料にならないのは、正確には分からないうえに、分かっても自社の事情とは切り離されているからです。
同業がAIを使っているという話は、たいてい伝聞や広告越しで、実際に何をどこまで任せているのか、それで何が変わったのかまでは見えません。派手に「AI活用」とうたっていても、中身は問い合わせの一部を自動返信しているだけ、ということもあれば、静かに要所だけ任せて成果を出している会社もある。表から見える情報で横並びを測るのは難しいのです。そして仮に隣の会社が全部AI化していたとしても、御社が抱えている重い業務がそれと同じとは限りません。判断の軸は他社ではなく、自社のどこに時間を取られているか。ここを見ずに横並びで動くと、次の落とし穴にはまります。
焦って横並びで入れると、道具だけが増える
「周りがやっているから」で始めると、目的がないままツールだけが増え、かえって現場が重くなります。
流行っているらしいツールを次々に契約したものの、どれも中途半端で誰も使っていない——という状態は、AIに限らずよく起きます。導入そのものが目的になると、「何のためにこれを入れたのか」が抜け落ち、管理する対象だけが増えていく。大事なのは、他社に追いつくことではなく、自社の困りごとが一つでも軽くなることです。この、目的から入る考え方は中小企業のAI導入で失敗しないための最初の一歩にも詳しくまとめています。焦りは、順番を狂わせます。まず自社の業務を見て、それから道具を選ぶ。逆にすると、道具に振り回されます。
判断の軸は「自社のどの業務が重いか」
入れるべきかどうかは、他社の動向ではなく、自社のどの業務に手を取られているかで決まります。見るべきは、次のようなところです。
- 手を取られて、他が止まる業務: 電話や問い合わせの対応に追われて、本来の仕事が後ろにずれる。ここに一次受けを挟めるかどうかは大きい
- 取りこぼしている接点: 手が塞がっている時間にかかってきた連絡を、返せないまま失っている。その数が読めないなら、まずそこを可視化する
- 判断は要らないのに人がやっている作業: 決まった手順の聞き取りや下書き、整理。ここは人でなくてもいい部分です
このどれかに心当たりがあるなら、他社が使っていようがいまいが、そこから始める理由は十分にあります。逆に、どこにも当てはまらないなら、無理に急ぐ必要はありません。人を増やさずに手を軽くするという発想そのものは人手不足を採用以外で解決する方法でも整理しています。AIが実際にどんな業務を肩代わりするのかはAI従業員のサービス紹介で確認できます。
よくある質問
同業が導入していないなら、うちも今はやらなくていいですか?
他社がやっていないことは、やらない理由にはなりません。逆もまた同じです。判断すべきは、自社のどの業務に手を取られ、どこで取りこぼしているか。そこに困りごとがあるなら、周りが動いていなくても始める意味はありますし、なければ急ぐ必要はありません。
周りに遅れると、取引や集客で不利になりませんか?
不利になるとしたら、それはAIを入れていないことそのものより、問い合わせに返せていない、対応が遅い、といった具体的な不便が原因であることがほとんどです。だからこそ、他社と比べるより、自社のどこで取りこぼしているかを見るほうが、手を打つ場所がはっきりします。
同業の導入状況を調べてから決めたほうがいいですか?
調べても、表から見える情報では中身まで分からないことが多いです。時間をかけるなら、他社の噂を追うより、自社の一日の業務を書き出して、どこが重いかを見るほうが、判断は早く正確になります。
流行っているからと入れて、失敗しませんか?
目的がないまま「流行っているから」で入れると、道具だけが増えて使われなくなりがちです。それを避けるには、最初に「どの業務を軽くしたいか」を一つ決めること。目的が先にあれば、流行とは関係なく、入れるかどうかを冷静に判断できます。
まだ小さい会社ですが、大手や同業に合わせる必要はありますか?
合わせる必要はありません。規模が小さいほど、一人が抱える業務の幅が広く、一つの業務を軽くする効果は実感しやすいものです。他社の規模や動向ではなく、自社の手の取られ方で判断してください。
まとめ
「同業はもう使っているのか、うちは遅れていないか」という不安は自然なものですが、導入を決める軸としてはあてになりません。他社が使っているかは正確には分からず、分かっても自社の重い業務とは別の話だからです。焦って横並びで入れれば、目的のないまま道具が増える。見るべきは、自社のどの業務に手を取られ、どこで取りこぼしているか。その一業務が見つかれば、遅い早いに関係なく、そこから始めれば足ります。
僕は足立区保木間で合同会社9Zを一人でやっていて、雇っている社員はいません。かつては「会社は人を増やして大きくするもの」という、周りと同じ当たり前に従って業務委託で人を増やしました。ところが増えたのは、前に進む力より、書類と、誰が何をやったかを揃える連絡のほうで、利益は薄くなり、思うようには伸びませんでした。そこで一度立ち止まり、周りに合わせるのをやめて、自分の一日の仕事を全部書き出した。人でなければできない判断や対人の仕事と、手順が決まっているだけの作業に分け、後者を一つずつAIに移した。売上は変えていませんが、事務に食われていた時間が空いて、手元の利益は厚くなりました。あのとき効いたのは、他社がどうしているかではなく、自社の何が重いかを見たことです。乗り遅れの不安より、自分の会社のどこが詰まっているか。そこから始めれば、順番を間違えずに済むと思っています。
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