AI従業員コラム

Column

AIに仕事を奪われると社員が不安がるとき

2026-06-28 ・ 合同会社9Z 須賀龍平

この記事の要点

AIを入れたいのに社員が「仕事を奪われる」と不安がるのは、AIを人の置き換えと捉えているから。実際にAI従業員が肩代わりするのは問い合わせの整理・返信下書き・書類の下ごしらえといった定型の事務で、金額や案件の判断、お客様への対応といった人にしかできない仕事はむしろ人に残る。奪うのではなく、雑務を引き受けて人を本来の仕事に戻す道具という位置づけが伝われば、抵抗はほどけやすい。小さな1業務から始めて効果を見せる進め方が要。人を増やして失敗した経験を持つ一人社長・須賀龍平が、不安のほどき方と進め方を自社の経験から解説。

AIに仕事を奪われると社員が不安がるのは、なぜか

結論から言うと、社員が不安がるのは、AIを「人の仕事を置き換えるもの」だと捉えているからです。実際にAI従業員が肩代わりするのは定型の事務で、判断や対人の仕事はむしろ人に残ります。ここがずれていると、導入そのものが社内で止まります。

「AIを入れよう」と経営者が言ったとき、現場が身構えるのは自然なことです。僕自身、自分の会社のAIを一人で作って回しながら、「社員が不安がったらどうするの」と何度も聞かれてきました。ニュースでは「AIが仕事を奪う」という話ばかりが流れます。だから社員からすれば、自分の席がなくなるかもしれないと聞こえる。でも僕が見てきた範囲では、中小企業で実際に起きるのは、人がいなくなることではなく、人が雑務から解放されて本来の仕事に戻ることのほうでした。この捉え方の差を埋めないまま進めると、せっかくの導入が「現場の抵抗」で頓挫します。

奪われると感じるのは、置き換えのイメージだから

社員の不安の正体は、AIが自分の仕事を丸ごと代わりにやる、という置き換えのイメージにあります。

けれど中小企業の現場でAIに任せられるのは、問い合わせの整理、返信の下書き、見積もりや請求の下ごしらえ——といった、本来やりたい仕事の手前にある定型の雑務です。お客様の事情をくんで判断する、金額を決める、込み入った相談に人として応じる、現場で手を動かす。こうした仕事はAIには渡せませんし、渡しません。つまりAIは、人の代わりに座るのではなく、人が雑務で潰れている時間を引き受ける位置づけです。「AIを覚えて操作する道具」ではなく「裏側で下ごしらえを進める働き手」という捉え方についてはAI事務代行とは?外注・派遣との違いを経営者目線ででも整理しています。

逆に言えば、「あなたの仕事を奪うのではなく、面倒な事務を引き受けて、本来の仕事に集中できるようにするものだ」と伝われば、抵抗は大きくほどけます。

人を減らす話ではなく、人を活かす話にする

ここで効くのは、AI導入を「人員削減」の文脈から切り離すことです。

中小企業の多くは、そもそも人が足りていません。事務員を採りたくても採れない、社長や社員が本業の合間に事務を抱えている——という状態です。そこにAIを入れる目的は、人を減らすことではなく、足りない手を補い、今いる社員を雑務から本来の仕事に戻すことです。問い合わせの一次対応や書類の下ごしらえをAIが受け持てば、社員は接客や提案、現場の仕事に時間を使えるようになる。これは社員にとっても、面倒な作業が減って本来やりたい仕事ができる、という前向きな話になります。人を増やすことが必ずしも成長につながらない、という構造は人を増やしても利益が増えないのはなぜかにも書きました。

伝え方としては、「効率化して人を減らす」ではなく「雑務をAIに渡して、その分あなたにしかできない仕事に集中してほしい」という言い方にすると、受け取られ方がまるで変わります。

僕自身、人を増やして失敗しました

正直に言うと、僕は逆の経験をしています。人を減らしたのではなく、増やして失敗しました。

僕は足立区で合同会社9Zという会社を一人で経営しています。以前、事業を大きくしようと業務委託で人をどんどん増やした時期がありました。ところが人が増えるほど、連絡や確認、書類のやり取りが増えて、かえって利益が圧迫された。コミュニケーションのコストばかりがかさんで、思ったように事業が伸びませんでした。そこで考え方を変えて、今は業務委託を1社に絞り、人がやるべき判断以外の事務——問い合わせの整理、返信の下書き、書類の前準備——をAIに任せています。結果として、売上を落とさずに利益率を手応えとして改善できました。

この経験から言えるのは、AIは人の敵ではなく、人が本来の仕事に集中するための土台だということです。僕の場合は一人なので、奪われる社員はいません。けれど社員のいる会社でも、AIに渡すのは雑務であって、人にしかできない仕事はむしろ際立つ——その構図は同じだと考えています。

社内の不安をほどきながら進める手順

AIが受け持つのは下ごしらえで、最終確認や判断は人に残る——この分担の全体像はAI従業員のサービス紹介で確認できます。

よくある質問

AIを入れたら社員を減らすことになりますか?

その必要はありません。多くの中小企業はそもそも人が足りていないので、AIを入れる目的は人を減らすことではなく、足りない手を補い、社員を雑務から本来の仕事に戻すことです。減らすためではなく活かすために使う、という位置づけです。

社員が「自分の仕事がなくなる」と反発しています。どう伝えればいいですか?

「あなたの仕事を奪うのではなく、面倒な事務を引き受けるものだ」と、変わること・変わらないことをはっきり伝えるのが先です。判断や対人の仕事は人に残ると線を引き、小さな1業務から始めて効果を見せると、不安はほどけやすくなります。

AIに任せると品質や対応が雑になりませんか?

下ごしらえはAI、最終確認と判断は人、という分担なので、お客様に出す前に必ず人が目を通します。むしろ社員が雑務に追われずに本来の対応に時間を使えるぶん、質を保ちやすくなります。品質面の考え方はAIに任せると品質は落ちないのかでも扱っています。

どの業務から任せるのがいいですか?

社員の負担になっている定型業務——問い合わせの整理や返信の下書き、書類の下ごしらえなど——から一つだけ始めるのがおすすめです。効果が見えやすく、社内の不安も和らぎます。

ITが苦手な社員でも使えますか?

使えます。新しいアプリを覚えるのではなく、今使っているLINEやメールの裏側でAIが動く形が基本です。社員が新しい操作を覚え直す前提にはしません。

まとめ

社員が「AIに仕事を奪われる」と不安がるのは、AIを人の置き換えだと捉えているからです。実際にAIが受け持つのは定型の雑務で、判断や対人の仕事はむしろ人に残ります。導入を人員削減の話ではなく、雑務を渡して人を本来の仕事に戻す話にできれば、抵抗は大きくほどけます。

僕自身は人を増やして失敗し、今は判断以外をAIに任せて一人で会社を回しています。人が増えれば会社が良くなる、というのが通説でした。でも僕の経験では逆でした。その逆張りを、人の仕事を奪うのではなく雑務を肩代わりさせる形で仕組みにしたのが、このサービスです。AIは人の敵ではなく、人が本来の仕事に集中するための土台だというのが実感です。大事なのは、いきなり全部を任せず、小さな1業務から効果を見せながら進めることです。

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須賀龍平(合同会社9Z 代表)
この記事を書いた人 須賀 龍平 — 合同会社9Z 代表

1996年生まれ。一人で会社を経営。業務委託で組織を広げた結果、利益とゆとりを失った経験から、「人がやらなくていい仕事はAIに任せる」やり方に切り替え、自社で実践したうえで「AI従業員」を事業化。在宅ナレーター育成スクールほか複数の事業を一人で運営している。

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